介護の悪いイメージをどう変えるか

介護は4Kなのか

テレビやネットなどで、介護に対する悪いイメージが語られるようになって随分経ちます。

介護は4Kだ、『キツイ・汚い・危険・給料安い』確かに、そのように言われても仕方がない部分はあります。否定しきれません。

 

しかし介護業界に関わる者として、少し反論をさせてください。

 

キツイ・・・介護の仕事にも様々な業態(訪問介護・デイサービス・特別養護老人ホームなど)があり、また同じ業態でも各事業所や各職員によって仕事のキツサは変わります。これはどの仕事でも同じですね。

ただ一般的には、介護は立ち仕事が多いこと、ベッドから車椅子・車椅子からベッドへの移乗介助や排泄介助などの仕事では、力を必要とするものがあること(介護技術を使い、力をあまり使わない工夫を介護職員は行います。またスライディングボードなどの道具を使えば、力はほとんど必要としません。)からすれば、キツイ仕事と言えると思います。しかし、体力を使う仕事は他にもたくさんありますし、体力は使わなくともストレスがかかる仕事と比べるなら、介護はそれほどキツイものでは無いと感じています。一般的に、利用者と家族は、介護職員に対して感謝されますので、ストレスは余りかかりません。もし、クレームを言われた場合は、ケアマネや相談員等が基本対応します。

 

汚い・・・介護のお客様は、他者からの援助が必要な高齢者です。利用者の中には、認知症の方やほとんど寝たきりの方もいらっしゃいます。当然排泄介助が必要になりますので、汚いと言えます。使い捨て手袋・蓋付きゴミ箱・消臭剤などで臭い対策はどの事業者も行っていますが、完全に臭いを無くすことはできません。また入れ歯のケアなども抵抗がある人はいると思います。これらの点は改善が難しいものですが、だんだんと慣れてきます。

 

危険・・・介護で危険な部分は、腰や膝を痛めやすいことが一番です。自分の体格にあった介護技術を身につければ予防できますが、腰などを痛めて介護から離れる人がいます。また認知症の利用者から暴力を受けることもあります。他の職業と比べるなら、命や重度の障害を受けるものでは無いが、やや危険な職業と言えると思います。

 

給料安い・・・厚生労働省は2019410日、2018年9月時点で常勤の介護職員の平均給与は月額30970円(賞与含む)で、前年同期より1850円増えたと発表したが、全産業平均と比べると約6万5千円低い。(朝日新聞2019410日記事から引用)

 

この記事からすると、常勤介護職員の平均年収は約360万円で、全産業の常勤平均年収は約440万円、差額は約80万円となります。確かに全産業平均と比べると安いですね。ですが小売業・美容業・飲食業などは介護と同等かもっと低い所もあるので、必ずしも介護職員の給料が安いとは言えないと考えます。

 

つまり、4Kと言える部分は確かにあるが他にも大変な職業は多いのであり、介護を特別視するのはおかしいと思います。

介護職員の不祥事

悪いイメージをもたらしているもう一つは、介護職員の不祥事がニュースに大きく取り上げられることです。悪いことしかニュースにならないとは言え、公務員や僧侶と同じくらいに取り上げられている感じがします。

報道機関は事件の重大性、話題性などを判断材料として報道するかどうか決めています。公務員は税金から給与をもらっている公衆への奉仕者です。僧侶は宗教家として倫理を問われます。しかし介護職員は、公務員でもなければ宗教家でもないわけで、一般の会社員と同等に扱うべきです。

介護は尊い仕事

介護職員をやったことがある方は、他の職業では経験できないことを体験します。日本は『おもてなし=お客様への過剰なサービス』を通常行うので、客は「ありがとう」「すいません」など謝意を表すことが多いですが、形だけのものがほとんどですよね。

しかし、介護、特に看取り介護を行う場合は、心からの感謝をいただくことがあります。言葉だけでなく、その方の雰囲気で分かります。また、人間の生き死にに関わることができることは、それだけで大変尊いことだと思います。

どうやって介護の悪いイメージを改善するか

①悪い事ばかり強調するのではなく、良い事を発信していくことが大切だと思います。この点は、介護に関わっている人が行うことはもちろん重要ですが、報道機関なども気にかけてほしいと思います。

 

②小学生から高校生を対象にして、体験学習をしてもらうこともいいのではないでしょうか。希望者に介護が必要な高齢者と接する体験をしてもらいます。

 

③待遇面の充実は、やっぱり大切です。精神論だけでは効果は限定されます。全ての介護職員に対して、常勤者は月5万円、年収で60万円アップ、パート職員は時給で400円アップぐらい行えば、かなり効果が出ると思います。2019年で約200万人の介護職員がいるので、200万×50万円(パート労働者を考慮して算出)=1兆円の予算を使えば実現できます。

どこから介護職員の給料アップ予算を捻出するのか?

この点は難しすぎて良く分かりません。全く自信はありませんが、何も書かないより良いと思いますので提案します。

①消費税の軽減税率を廃止して得られる税収を当てる。一般の人はあまり苦にならないかもしれませんが、事業者はとても煩雑です。全て消費税10%にすべきです。

 

②タバコを11,000円程にする。タバコを辞める人も多くなると思うので、余り増収にはならないと思います。タバコは医療費を増加させる要因にもなるので、すぐ実施すべきです。

 

③赤字国債を発行する。20196月末時点の国債保有率は、日銀が46.5%です。事実上、悪性のインフレーションを引き起こすとして先進各国で禁止されている中央銀行による国債の引受けが行われています。決して良い事でないですが・・・仕方がないと思います。

 

④いわゆるヘリコプターマネーを消費者物価指数が2%になるまで行う。ヘリコプターマネーとは、ヘリコプターが飛んできて、空から現金をばらまくように、中央銀行または政府が対価を取らずに大量の貨幣を世の中に供給する政策をいいます。赤字国債の発行との違いは、将来政府が償還に応じる必要があるかどうかです。もちろん悪性のインフレーションの危険性はあります。

 

無駄に使われている予算の削減が重要なのは分かりますが、勉強不足な私には判断がつかないので触れません。

 

少子高齢化の進む日本にとって、高齢者よりも子供に予算を当てるべきとの主張には同意します。したがって必要な予算は数兆円におよぶ為、日本の財政は根本的な見直しが必要です。この点は、政治家・学者・報道機関・経済界・官僚・シンクタンク・労働組合等の方々に頑張っていただきたいのですが。

井原俊明

公開日2019/11/4(更新日2019/11/6)